この方は、百工房アートスペースに長く通って、伝統的な植物画を目標に掲げて、身近な植物のデッサンを描き続けていらっしゃいました。今回初めて、植物が細かくリアルに描けましたので、お互いに達成を喜び合いました。

鉛筆で下描きを起こし、ペンでデッサンを進め、水彩を入れ、またペンで細かく描き込みを進めるという、ボタニカルアートの手法でデッサンを繰り返しました。しかし、植物というものは複雑で、線と描き込みが連動しなかったり、明暗と色が連動しなかったり、完成までには時間が掛かるため途中になってしまったりして、半年間苦労し続けてきました。他の仕事をしながら、家族の世話をしながらですから、教室以外で完成まで続けて描くことが出来ない。通い続けただけ立派です。

一計を案じて、出来るだけモチーフの数を減らして、出来るだけ早めに水彩を入れるようにしました。元々この方は、細かく描くことが出来る技量をお持ちでしたので、上手く技法とモチーフと時間のマッチングが計れ、ご自身の目と手だけで完成に至りました。

ここでは、自分の力で、作品を作っていただく方針です。この頃、技法だけを強調する広告をよく見かけますが、その方の描きたいテーマと技法が合致することも簡単ではありませんし、技量と技法が合致するにも時間が掛かります。当たり前で普通のことのように思えても、背景にはたくさんの積み上げがある、そのように気付かれた作品でした。