2020年12月末に行った、デッサン・コンクール優秀者の方の作品を、掲載いたします。

テーマは「手」、時間制限も無し、何かを持つなど工夫も自由、各自自宅で描き進めて、オンラインで審査を行うという形式でした。最近は、リアル教室からオンライン教室に切り替える方が多いのですが、今回はオンラインで行った初めてのコンクールでした。多くの方にご参加いただき、皆様の活力に繋がったと思います。

 

女性‐マンガイラスト分野

作者は、時間が過ぎ去っていくことに対する感慨を、テーマにしました。持ち方、腕の入れ方を工夫し、光や質感を丁寧に細部まで描き切っています。「手」というテーマに関しては、模範的な作例です。今回の成功は、アイデアの段階で試行錯誤できたこと、より良いアイデアを求めて描き直すことにあったと思います。「まとめてしまう癖」と、作者は自分の欠点を把握していますが、まとまったものを壊して広げると、大きく力強くなることを実感できたのでは無いでしょうか?今回のコンクールは自由度が高く、手の描写だけではなく、アイデアの面白い方、工夫を凝らした方が上位になりました。試行錯誤する重要性を感じた経験を、今後に生かしていただければと思います。

 

男性‐美術分野

作者は、暗く重たい空気が中に明るく輝く光を、テーマにしました。まるで霧の中に、灯台が光を発しているような、象徴的な作品です。背景も、物質感と質感を描いて「もや」を表現した、凝ったものです。優秀な作品は、絵はどうあるべきか?デッサンはどうあるべきか?という分岐点を突き付けます。ただ手を描写するだけなら、立体感を更に追及すればいいということになりますが、この作品の場合は立体感を付けると、雰囲気が損なわれる可能性も出てきます。しかし、絵よりデッサンの方が試行錯誤がし易いので、更に立体感を追求し、「バランスが崩れるか崩れないかというポイント」を探ることは出来たのではないか?と、私は思います。それにしても、これだけの世界観を作ることが出来るのは素晴らしい。デッサンで得た成果を、次は絵として生かしていただきたいと思います。

 

女性‐マンガイラスト分野

作者は、ゾンビの様に這い上がることを、テーマにしました。テープを巻き付けた手と、テーマが良くかみ合っている、ストレートにハートに響きました。デッサンに関してはまだ経験の浅い作者ですが、クリーンヒット。形は懸命に追っている印象、それほどおかしいところは有りません。明暗の付け方も丁寧です。タッチで質感を描くのには、もう少し経験が必要でしょうか?でも、質感には迫りつつあります。アドバイスとしては、「強調するところ」=指を力強く濃く、「抜くところ」=腕を薄くというように、(写真には無い)絵としての強弱を付けることが出来れば、更に良い作品になっていくと思います。

 

男性‐美術分野

作者は、カンフー映画でクルミを割るシーンを思い浮かべながら、力強さをテーマにしました。手の皺とクルミの皺が、共鳴しています。時間を掛けて細密に描いたことで、優しさも持つ、表情豊かなデッサンが出来上がりました。アドバイスとしては、まずは構図、紙を縦に使った方が良かったですね。その他は、やはり強弱を付けること。全体的に同じ濃さで繊細に描かれていますので、指に陰影を盛り、コントラストを付ければ、更に力強さが出たと思います。それでも、ここまで細部を追及する経験は、これまで無かったはずです。コツコツと描く習慣を身に付けて、この描き方を持ち味に出来れば、作者は化けるかも知れません。期待しております。

 

ここに掲載されなかった他の作品も、熱量の有る力作が多かった印象です。次回コンクールに参加された場合は、順番が入れ替わる可能性も大いにあり、だと思いました。ご参加いただけた方には、感謝申し上げますと共に、これからもお互いに切磋琢磨して、熱い日々を送っていただけますことを願っております。皆様、お疲れさまでした。